こんにちは、新潟オフィスの井上です。
今年1月に行われた三条ものづくり学校での「書体の一日学校」がまだ記憶に新しいですが、 あっという間に6月になってしまいます。
前回書いた記事→「活版と文字で遊ぶ2日間「書体の一日学校」
この「書体の一日学校」のイベントをdas.でお手伝いさせていただいた縁もあって、 今回はKOULE TYPEの吉沢さんに弊社新潟オフィスで活版印刷のワークショップを行っていただきました。
何年か前から活版印刷を使ったショップカードや名刺が流行っていますが、「なんとなく雰囲気がいいから」、「おしゃれだから」という理由で活版印刷を選択するというのではなく、 その特性や文選・植字の流れを理解した上で、実際に文字を拾うところから始めて、印刷までの一連の流れを体験してみようという試みです。
全体の流れとしては以下になります。
- 1. 活版印刷に関する基礎知識の講義
- 2. 文選
- 3. 植字
- 4. 印刷
1. 活版印刷に関する基礎知識の講義
今回は印刷機に触れること自体初めての方も多いため、 まずは前回の記事でもご紹介した大日本印刷様の動画を利用させていただき、活版印刷の成り立ちや流れの基礎知識の共有からはじまりました。
この記事を読んでいる方も、上記の動画を見てから読んでいただくとより理解が深まるかもしれません。
動画を見ながら、吉沢さんに活版印刷に使用する道具の説明などを受けました
今回、活版印刷でつくるのは das.のタグラインである「Learn, find and Think」(知って、見つけて、考える)と、会社名、URLを入れたシンプルなカードです。
事前に仕上がりを想定して書体とレイアウトのアタリをillustratorで作成しました
ワークショップは、das.新潟オフィスのほぼ全員が参加するため、3チームに分かれて「タグライン」「会社名」[URL」のどの部分を組むか、各担当を決めました。
新潟オフィスでは、公正な振り分けをする際には専らアミダくじを採用します。
2. 文選
文選の際「文字を拾う」と言いますが、その名の通り小さな活字や込物(文字間を調整するのに必要な小さな鉛片)を手で拾い、 必要な活字を選んでいきます。
ぎゅっと小さくなって文選するdasメンバー。こういった細かい作業中に性格が出る気がします
文選・植字に必要な道具に紛れてさりげなく置いてあった黒い箱はウェットティッシュケース
(何故かこの話題で盛り上がりました)
3. 植字
続いては植字。いわゆる文字組みです。 ステッキと言われる道具を使って、拾った活字を組んでいくのですが、これがまた難しく。。。 熟練の職人は片手にステッキを持って手際よく活字を組んでいくのですが、もちろん私たちは素人なので 活字が倒れないように細心の注意を払いながらじっくりと時間をかけて組んでいきます。
しかしここがデザイナーの見せ所でもあり、各チームで担当箇所の文字組を丁寧に調整していきました。
文字間の調整に仕様する込物。6ポ・8ポなど正確に文字組を調整できるよう様々なサイズがあります。(ポはポイントの意)
植字までが終わったら、ここからは印刷用の版をつくります。 この部分は、技術が必要なので吉沢さんに担当していただきました。
“インテル”と呼ばれる金属製や木製の板を使い版の中を隙間なく埋めていき、活字を固定します。
出来上がった版がこちら。しっかりと固定されているので、持ち上げたり傾けたところで活字が抜け落ちません。 もちろん抜け落ちて活字がばらばらになってしまったら最初からやり直しということなので、 その分注意が必要な作業になります。
残酷ですね。。。
4. 印刷
ワークショップを開始して約2時間。 ここまでの工程が終わって、ようやく印刷に入れます。
今回使う印刷機はこちら。イギリス・キャスロン社の小型活版印刷機「ADANA」(アダナ)です。鮮やかなレッドが美しい。
このように、天板をくるくる回しながらインクを全体に馴染ませていきます。 この時のインクの厚みも重要で、調整次第で仕上がりに大きく違いが出てきます。
印刷物を固定するために紙を貼っているのですが、ここにも英字新聞を貼っていたりと、細かいところに吉沢さんのこだわりを感じました。
印刷機に版をセットして、いよいよ印刷開始です。
しかしここでスムーズに印刷に入れることはほとんどありません。 テストで何枚か印刷し、先ほどのインクの盛りやプレスの強さを調整していきます。
最終的にインクの盛る量を薄く調整してより文字がシャープに出るように、文字間は”Learn”の”e”と”a”の文字詰めがなかなか納得いくものにならず、 込物のサイズを変えてみたり外してみたり、調整に何度も試行錯誤しました。
この画像をみてお分かりになるように、インクの盛り方で文字の太り方や文字間までも違って見えてくるので、何度も調整しました。
違いが分かりやすいように1回目の印刷物から最終的にOKになったものまで並べてみました。
右下が完成物。”e”と”a”の間は、「薄い紙を2枚入れる」という形で落ち着きました →拡大する
印刷が終わったカードは、乾燥するまで印刷面が接触しないようにして保管します。同じものがたくさん並んでいる画は気持ちいいですね。
出来上がったカードはこちら。これからいろんな方々に配布するのが楽しみです。
何よりも自分たちで文選から印刷までおこなったので、とても愛着のわくものになりました。
印刷時のオフショット。ワークショップ後の懇親会中に交代でコツコツ印刷して400枚以上のカードを印刷できました!
吉沢さん、今回も楽しく勉強になる時間をありがとうございました。
活版印刷でオリジナルの名刺やショップカードなどを制作してみたい方、活版印刷のワークショップにご興味のある方は 一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。
KOULE TYPE(コウラタイプ) Facebookページ https://www.facebook.com/kouletype1020/
※最後に、本記事の写真はすべて弊社明間による撮影です。
きれいな写真のおかげでとても分かりやすい記事になりました。
INOUE.T
デザイナー
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