レコメンド&レポート

様々な角度から文字の美しさについて考える「書体の一日学校」

June 25, 2019

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das.新潟オフィスアートディレクターの安達です。

このブログでも以前紹介させていただきました「書体の一日学校」の第二回が4月21日に開催されました。(前回のブログ内容はこちら
書体の一日学校では、「伝えるための文字とは、書体とは何か?」をテーマに、様々な業界で活躍されているクリエイターの視点から見た「文字」についてのトークショーを開催しています。トークショーの他に、木活字で印刷する活版ワークショップやカリグラフィ体験、書体をイメージし焙煎したコーヒーの販売なと、文字についてを広く楽しみながら体験し、学ぶことができます。

社内では4名が受付スタッフとして参加。今回はトークショーの内容について、少しご紹介させていただきたいと思います。

トークショーでは、前回に引き続き書体ディレクターの小林章さんと、新潟県を中心とした多くの商品のブランディング、プロモーション活動に携わっているアートディレクターの石川竜太さん、ベーシックプロダクトスタジオのエフスタイル五十嵐恵美さんと星野若菜さんをお招きし、二部制での進行となりました。イベントの主催であるKOULE TYPE(コウラタイプ)の吉沢加也さんによる司会の元、楽しくトークはスタート。

第一部では、小林章さんと石川竜太さんの対談です。
ドイツのモノタイプ社で書体デザイナーとして活躍する小林さんからは、欧文組版の基本的な構造や、ご自身が制作された欧文書体「Akko」の文字の成り立ちや特徴を事例をもとにご紹介いただきました。

欧文書体デザイナーのイメージが強い小林さんですが、ロゴや文字に興味をもったのは以外にも和文書体との出会いがきっかけのようです。

小林さんは幼少期にお父さんがスケッチしていた「日本酒のラベルの文字」を集めており、そこから筆文字特有の筆の運びや力のかかる部分に注目し、美しい文字の自然なあり方について考えるようになったそうです。欧文書体にも線の幅の広がりに強弱がありますが、これもきちんとした自然な筆の運びに従ってできていると教えていただきました。

そんな小林さんと石川さんがお互いの仕事の中で共感できた点が「文字の余白」についてです。
和文書体を組み合わせてロゴをデザインすることの多い石川さんは、文字を並べた際、全体の余白のバランスを見ながら、一つ一つの文字の大きさ、線の太さを調整されています。漢字には字体が様々ありますが、少しものたりなさを感じた部分にはあえて旧字を引用するなど、文字を「形」として見ながら、和文ならではの趣を表現していきます。

小林さんは、アルファフェットを並べた時に「白い光が見えた」とお話してくれたのですが、これは黒い文字の周りを埋める白い余白のことを指しています。欧文書体も和文同様、白い余白の見え方に注意を払い文字を成形していくのですが、特に欧文は単語の組み合わせで文字組を行う世界。アルファベット1字1字を見るのではなく、単語として組み合わせた際のバランスが重要となるため、どんな文字が隣に来てもいいように形を整えなければなりません。
和文も欧文も用途は違えど、デザインする上での文字の美しさには共通の考え方があるのだと気づかされました。あらためて奥の深い世界です。


トーク後の質問タイムでは、たくさん意見が飛び交っていました。

二部の方では、引き続き小林さんをゲストに、エフスタイル五十嵐恵美さんと星野若菜さんのトークです。
一部では文字のデザインについて実践的な内容が中心でしたが、二部ではプロダクトを通しての文字の役割やパッケージの在り方、流通にまつわるお話を、五十嵐さん、星野さんを中心にお話いただきました。
エフスタイルさんは、「製造以外で商品が流通するまでに必要なことはすべてやってみること」をコンセプトに、近隣の地場産業と手を組みデザイン提案から販路の開拓まで一貫して請け負う、プロダクトデザイナーです。
商品は新潟県の伝統工芸品「シナ織り」を使ったバックや、山形県の月山緞通とのコラボレートによるマットシリーズなど、その地方の特色を生かした、シンプルで使いやすいものが特徴です。主役は「生産者・消費者」であり、パッケージではあえて個性を消して、プロダクトそのものの良さや、作り手から使い手へ「良いもの」が伝わることを一番大切にされています。
これを受けて、小林さんからは「人からいただいた数年愛用の靴下に、とても良い商品だという印象は残っていたが、その販売・プロディースをされていたエフスタイルさんの存在はまったく忘れてしまっていた。(そのまま、気に入って使っていた)今思えばそれがエフスタイルさんの商品だった!と思えるのが嬉しい」というエピソードが!
ものと人との関係が気持ちよく存在している様子が、皆さんの会話からとてもよく伝わってきました。

シンプルなデザインが多いエフスタイルさんの商品パッケージは、手差しのコピー機で印刷されたものや、面つけ後の余ったはみ出しの部分で帯を作るなど、パッケージにはなるべくコストをかけないよう工夫がされています。
書体も商品にスッと馴染むものばかり。書体はあまり抑揚がないものを選ぶと教えていただきましたが、エフスタイルさんのものづくりの姿勢がそのままパッケージに現れているように感じました。

商品の設計・デザインから、売り場での陳列方法、そして商品が買い手の生活にどのように関わっていくか。単純なプロダクトデザインだけではない、作り手と買い手をとても大切にしたものづくりの考え方に、改めてエフスタイルさんの魅力を再発見できました。

一部、二部ともに、違った視点から見た「文字」のお話を聞くことができ、知見を深めた一日であるとともに、ちょっと息抜きをしながら、デザインや文字のことを見つめ直すことができた、とても良い週末でありました。
(写真撮影:前田和也さん)

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ライター紹介

ADACHI.S

アートディレクター

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